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「何故、何の為にと言いたそうな顔だね」
「……ああ、訳が分からん」
「だろうね」と冬次郎はコーヒーを一口飲み、一呼吸置く。
「では、もう一つ聞こう。私の職業は何だと思う?」
意図の分からない質問に恭也は首を傾げるも、質問に答える。
「格好から見て、学者か医者ってところだな」
「んふふ、後者が正解だね」
白衣の格好ならば、そう予想するのが当然。
というより、机の隅に置かれたカルテらしきものがチラッと見えたからだ。
「ご覧の通り、私は医者をしている。そして、私の兄、
宗一郎(そういちろう)もまた名のある医者だ」
(身内の自慢話かよ……)
「まぁ、私は患者を治す医者として働いているが、兄は医療の技術や機器・新薬などを開発している」
兄を尊敬しているのか、冬次郎は笑顔で語りかけていた。
「兄は天才的な才能の持ち主でね、国からも期待をされていたよ」
そこまで言い終わると浮かべていた笑顔は消え、複雑な表情を浮かべた。
「……そして、今から三年前。兄は医学の発展へと繋がる研究をし、開発を始めた」
「……開発?」
「『ヴァルハラ』と名付けられた人工心臓の開発さ」
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