8人が本棚に入れています
本棚に追加
○月××日。
オープン初日は、残念ながらお客様は1人も来なかった。
近所の家々を周り、ポストにチラシを入れたから、外まで見に来る人はチラホラいた。
私が窓から覗き、目が合うと、皆、去ってしまう。
この街は恥ずかしがり屋さんが多いのだろうか。
試しに、客席の窓を全て開け、コーヒーの香りを思い切り外へ流してみた。
通りすがりのご婦人が、香りに誘われて扉を開いた。
やった!と思った矢先、
いらっしゃいませの言葉をかける間もなく、再び扉は閉ざされた。
ご婦人は、『ぐほっ』という濁った声を発し、元来た道へ走り去った。
それはまるで、お魚くわえたドラ猫を追いかけるあの人の52倍くらいの早さだった。
ご婦人は、きっとお手洗いにでも行きたかったのだろう。
とにかく残念だ。
けど、挫けないさ。
明日、また頑張ろう。
最初のコメントを投稿しよう!