北風と太陽

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  僕が恐れているのは そんな奴らじゃない 本当に恐いものは 僕のお気に入りのこのコートは 人から見たら みすぼらしいのかもしれない 詐欺師が 口先だけで脱げと脅しても 僕はコートを脱がないが 優しい人が 本当に 心から僕の為を思って そんな粗末なコートでは 寒いだろうから そう言って 新品のコートを僕にくれたら このコートだけで 寒さに耐えている僕を 暖房の効いた暖かな部屋に 招いてくれて ここでゆっくり好きなだけ 暖をとっていきなさい そう言われたら 僕はどうするだろうか いつかまたくるであろう 【その時】こそが 僕が本当に ためされる時なのだろう  
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