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「瀬名!」 怒鳴り声で目が覚めた。 ふと気がつくと周りの席の生徒達が自分に注目している事に気 がついた。 「試験も近いんだ!ちゃんと聞いてろ!」 「すいません。」 授業中に軽くうとうと眠りこんでしまった。 窓際の光が差す席はぽかぽかして知らぬ間に意識が飛んでしま う。 特に火曜日の6時間目は意識を保つのが難しい。 5時間目に体育があり、疲れて教室に戻り、その次の授業が英 語というまさに誘惑を誘うような時間割だ。 そしてこの英語教師は授業の進行内容に少々の問題があり、 予習と復習にやたら時間を割く。 そのためか、一度理解すれば、リピートテープのように同じよ うな話をしている事がたびたびある。 その上、リスニングやら発音やら呪文のように聞こえて、いつ の間にか意識が飛んでしまうのだ。 キンコンカンコーン… 「おっし。次の授業もこの続きからだ。号令!」 必死に意識を保ちながら授業を終えて、ふと落ち着いていると すぐに担任が慌しく教室に入ってきて、話を始めた。 「出張が入ったからホームルームは無しだ!お前ら寄り道しな いですぐに帰れよ!はい日直号令かけて!」 生徒達が騒ぎ立てた。雄たけびのような声を上げてる男子もい る。 日直が「起立!!さようなら。」と号令を掛けて、授業が終わ ってすぐに早々と解散となった。 この日は掃除とホームルームがなしになって、少し早めに帰宅 となった。 京一は号令で挨拶を済ませたあと、すぐさま教室を出て帰宅す ることにした。 いつもは教室で仲のいい3、4人と喋って帰るのだが、今日は 少しばかりの用があったので、一人で帰ることにしたからだ。 そして廊下を早歩きで歩いている時だった。 「京一!」 後ろから聞きなれている声がした。誰だかコンマ1秒声を聴い た瞬間にわかった。 振り向くと菅井が立っていた。 「なんだよデートか?こんなに早くに帰るなんて珍しいな。」 「ちょっと今日は用があってな。少し早く帰る。」 「そうかよ。またゲーセンいこうぜ。またな!」 そういうと菅井は廊下を反対方向に向って走っていった。 菅井と別れて、下駄箱で靴をとり紐靴の紐を緩ませて靴を勢い た。 少々のはや歩きで家につき、ドアを開けた。鍵はかかっていな い。
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