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-出会い- 12月25日と記憶している。 その日は土曜日で、大通りには人が沢山いた。その頃の俺は人込みの中を自慢の鍵尻尾を立て、威風堂々と歩いていた。そんな俺を人は嫌な目で見ていた。"悪魔の使者"としか見なかった。 嫌気がさした俺は真っ暗な狭い路地に入ろうと曲がったらどこかの子供が「あっ!あの黒猫!…当たれ!!」と足下にあった石を俺に投げてきた。   そんな俺は"孤独"には慣れていた。いや、寧ろ望んでいたんだ。人間や他の猫を思いやるなんて煩わしいと思ってた。そんな事を思っていたら23くらいの男(荷物から見て恐らく絵描き)は俺を抱き上げ、俺の目を見ながら 「今晩は、おチビさん。君の目…僕とよく似てるね。」 その時決めた。 「俺は一生"孤独"に生きる」と。 だからもがいて、引っ掻いて、"孤独"と言う名の逃げ道をひたすら走った。こんなに人間が優しく、温もりなんて持っていない。俺はそう思っていた。 だが、その絵描きは俺がどれだけ逃げたって追って来やがった。 俺は観念して渋々そいつと暮らす事にしたんだ。
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