7人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
-故郷-
俺は辿り着いた。彼の故郷に。彼の恋人の家まで…あと少し。
(ここまでいろんな事があったな……ふっ、よくここまで走ったもんだ。あと少しで着くんだ。頑張ろう)
と思い、俺は走った。
(くっ!…あと‥少しなのにな)
立ち上がる間もなく襲いくる罵声と暴力
(辛い。諦めたい。もう楽になりたい。)
そう思った時、ある言葉が聞こえて来た…
「絶対届ける。約束だ。」
その言葉を聞いて、俺は立ち上がった。
(負けて…たまるか!俺はホーリーナイト!!こんな事は何回もあったじゃないか!)自らを奮い立たせ、今にも千切れそうな手足を引き摺りながらなお走った。
そして見つけた。恋人の家を…
俺は扉を引っ掻いた。何度も何度も引っ掻いた。
「お願いだ。出て来てくれ。」
それだけを願いながら、ひたすら扉を引っ掻いた。
そして俺は倒れた。
「あら?この猫、確か………」
恋人は猫を優しく抱き上げ、銜えていた手紙を読み、泣きながらこう言った。
「そう…あなたが届けてくれたのね。ありがとう。"ホーリーナイト"」
恋人はもう動かない俺の名にアルファベットを一つ加えて、立派な墓に埋めてくれた。墓にはこう書いてあった。
"HOLY KNIGHT 1858-1860"
最初のコメントを投稿しよう!