6・かまれた腕の傷

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{3} 「ヘックション!何となく肌寒いな…」 桜は、家路を急いでいた。 ここは、夜の住宅街。 「『嫌な胸騒ぎ』… まだ、おさまらないよぉ。どうか通り魔に会いませんように…だ、誰?!」 不意に気配を感じ彼女は、驚いて振り返った。 そこには…青いTシャツにジーパン姿の男が立っていた。 かなりの長身である。 「黄久郎さん!」 桜たちのサークルの先輩で雪美のカレシ、 宮嶋黄久郎である。 青いTシャツは、彼のお気に入りだ。 「どうしたんですか?!こんな遅くに…。 それにこんな場所で…」 「チッ!それがさぁ…。 いつもの刃物屋のバイト、終わるの長引いちゃって…。 それにしても、夜になって少し寒くなってきたね。まあ、これくらい半ソデでも平気だけど…」 彼は頭をかきながら笑った。 「そうですか? 私もさっきまでジャージだけだったんですけど、外に出たら何となく肌寒いんで上にジャンパーを着て…… って、どうしたんですか?!その怪我!!」 黄久郎の左腕の関節の辺りに、何か丸い形の傷が付いている…。 よく見ると、それは動物か何かにかまれた時にできる歯形の様にも見える…。 「あ、コレ? さっき、道ばたで野良犬をなでようとしたら、いきなりガブリとね…チッ!!なあに、たいした事ないよ。アハハ!!!
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