41人が本棚に入れています
本棚に追加
ひとしきり泣くと落ち着いて、私達は朝方まで飲み明かした。
「うぇぇぇ…もう飲めない」
ぐるぐる回る視界に気分が悪くて二人してぐったりしていた。
携帯が七時を知らせるアラームを鳴らす。
その音すら頭に響いた。
「ぁぁああ゙あ゙うるさいぃ~」
携帯を見るとアラーム画面に“レポート提出”と表示されている。
……。
「あああああっ!」
慌てて飛び上がると足元に転がっていた実花子を踏みつけてしまった。
「うるさいし痛い!何~?」
「今日提出のレポート、私まだ仕上げてないんだよ!学校行かなきゃ!」
支度を終えると、一足先に実花子が帰ると言い出した。
玄関まで見送ると、私に向き直った彼女がにっこり笑った。
「しっかりケリつけなきゃ次にも進めないでしょ?」
「分かったよもう!」
耳の痛い話をぶり返されて顔をしかめた。
私の反応を見てクスクス笑う。
「思い切って伝えなよ。もしフラれても慰めてあげるから」
フラれても、という言葉にピクッと眉がつり上がった。
「あんた、わざわざそんな事言うために来たの?」
襟元を掴みすごむ私に実花子が何かを思い出したように目を見開く。
「あ!そうだった!」
ごそごそとバッグを探り、一つの封筒を差し出した。
条件反射でそれを受け取る。
「卒業したら英介と結婚するの」
幸せそうに微笑む実花子はとてもキレイに見えた。
みんな、確実に自分の幸せに向かって歩き始めている。
「結婚かぁ…良かったね実花子」
逃げてばかりいちゃ、いつまでたっても先へ進めない。
私もちゃんとケジメつけなきゃ。
「想いはちゃんと伝えてあげなきゃ。泉の気持ちがホンモノなら尚更。しっかりね」
どこか自信に満ちた言い方に引っかかったけれど、素直にその言葉を受け止めた。
───────────────
あの日、実花子が背中を押してくれなかったら、私は今でも後悔していたかもしれない。
想いは叶えるものじゃなく伝えるもの。
逃げてばかりじゃ終わりもしなければ始まりもしない。
それは自分でも分かってたはずなのに、すっかり忘れてしまっていた。
バラバラになりかけていた気持ちを、あの日実花子が助けてくれた。
彼の事ばかり考えていたのに、素敵な友達に巡り会えた事が嬉しかった。
あの日の事、よく覚えてる。
最初のコメントを投稿しよう!