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三回戦
私は今と違って、いざ恋をしても駆け引きとか小細工は全くできなかった。
ストレート過ぎる愛情表現は彼を相当イラつかせていたに違いない。
でも当時、フラれる事なんかちっとも怖くなった。
少しでも私の事で彼のリアクションを見れるのが嬉しかった。
そして無関心になられるのが怖かった。
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私は伸びた髪にパーマをかけてイメチェンを計った。
メイクも少し変えて、彼の好きそうな服を着て大学へ行く。
「あ、泉!何かいつもと違うね~」
実花子の言葉に英介も反応する。
「ホントだ。いい感じじゃん」
私は二人を無視して彼に尋ねた。
「シンちゃん、どっちが好み?ストレートとパーマ!」
「キョーミねー」
ウハウハの私を見る事もなく、携帯を触りながら上の空で口を開いた。
心の中を、ヒュウ…と冷たい風が吹き向けた。
彼に掴みかかって無理矢理振り向かせる。
「ちょっとは構ってくれたっていーじゃん!こんなにこんなにこぉーんなにシンちゃんの事好きなのにぃー!」
「知るかよ!バカかてめぇは!」
私の腕を振り払い、乱れた服を直し、掴んでいた所をパンパンと払った。
…ヒドイ!
「だいたい、本気で好きな奴に好き好き簡単に言えるか?」
本気で好きなら…?
その言葉にキョトンとしてしまう。
私は今までの自分の気持ちを疑った事なんて一度もなかった。
「言える!」
「…理解できねぇ」
ケロッと答えた私を心底ウンザリした様子で見下した。
どうしたら理解してもらえるんだろう。
どうしたらちゃんと私を見てくれるんだろう。
ただ彼の目に映っていたいだけなのに。
だけど私の言動はいつも裏目に出てばかりだ。
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