答えはひとつ

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スズは真っ直ぐな人間である。 仮想世界に放り込まれ、工場の過酷な状況をものともせず、前だけを見る。 “工場を、皆を解放するのだ!” 眩しいばかりの聖女ジャンヌのようなその熱は、岳を巻き込み困難を跳ね退け、遂に天使を打ち倒したのだ― 絶体天使を倒し…新たな“天使”となったスズ。 彼女は何を想ったのだろうか。 このケータイがあれば現実世界に戻れる! 愛する岳と一緒にいたい。 仲良く手を繋いでデートもしてみたい。 二人で未来を見ていたかった。 …だけど。 既に彼女の現実世界は(幸福論によってか、意思を失いつつあることによってか)本人にはとても耐えられない、悲惨な状態になっていた。 帰れば、生きていくためにそうした現実が待っているのだ。 そして何よりも、この仮想世界の人々を見捨てられるだろうか? 苦労して、力を合わせて圧政から解放した仲間達。 自分達がいなくなれば、この世界の人々はどうなってしまうのだろうか。 圧政を強いられてはいたが安全だった工場を捨て去り、そして自分達リーダーを失った人々は、これからどうなるのだろうか? 天使には、人類を救うという義務があるのだ。 …ならば、岳とこの世界を住み良く変えていくのはどうだろう。 二人で人々を導き、全てを解放するのだ。 新しい世界を作るのだ! しかし。 《「君たち………選抜者は、この世界で暮らすうちに、現実世界を忘れてしまう。現実世界に残った肉体は、やがて意思を失い、不遇の死を迎えるのだ。」》 この世界は現実世界ではない。 このままここに留まれば、二人の肉体は死んでしまう! 愛する岳が、死んでしまうのだ。 スズは決断する。 自分は帰れない。 でも、岳は帰らなければならないのだ…!
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