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岳が夢の中で“意識の狭間”を潜り抜け、現実の自分を垣間見た事件(財布を盗られ、ナイフを持ち警察の尋問を受けていた)の時、スズも同じように眠っていた。
この後スズは《“以前歌舞伎町でバイトをしていた”》と初めて現実世界の話を口にするのだが…
この時、スズもまた現実世界の自分を見たのではないか、自分のあまりの変わりようにスズは現実世界に戻るのを拒否したのではないか―
岳の想像はこうである。
スズのしていたバイトの話だが、それは“歌舞伎町の天使”から連想される商売ではなく、現実世界に居た時には、おそらくは岳と同じように平凡なバイトであったのかもしれない。
仙人が言う“二つの世界の幸福と不幸のバランスはリンクしており、片方の世界で幸福になれば他方の世界では不幸になる”というのが真実であれば、
仮想世界で革命を成功させ彼氏を作り世界一充実した運命を辿ったスズは、現実世界に於て果てしない不幸を現在進行形で背負っていなければならない。
つまりはスズの現状は例えば水商売程度ではなく“歌舞伎町の天使”から連想される商売にまで本人の知らぬ間にエスカレートしており、本人が今更現実に戻ったとしても修復できないような状況に置かれている…可能性が高い。
本当に二つの世界で内心の幸福と不幸がリンクしている、とするならば、スズもまた相当に荒んだ状況でなければならないからだ。
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