揺らぐ世界

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結局、真実はどうなのだろうか。 仮想世界のスズは現実世界の鈴―自分の荒んだ肉体―を嫌い、蔑み、憎んだ。 自らは天使のケータイを手にし、仮想世界の“神”となったのに、現実世界に於ては好きでもない男に媚びへつらい汚れた身体となってしまっている(あくまでも岳視点だが遠からず真実だろう)。 そんな忌むべき自らの肉体を岳に殺してもらうため(岳に言わせれば“浄化のため”)にコマ劇場へ導いた…。 悲しい結末だ。天使に裏切られ利用され…挙句の果てにヒロインにまで弄ばれた主人公の哀れさと言ったらない。 しかしちょっと待って欲しい。 これでは“切ないラブストーリー”ではなく“哀れな男の末路”でしかない。これを奇跡の物語などと呼べるのだろうか。 二人の恋愛が一つのテーマであったはずが、いつの間にか悲劇を通り越して陰謀劇のようになってしまっている。 …そしてまた、コマ劇場へ呼びこんだスズの真意は岳を利用することだけだったのだろうか。 利用するだけであれば、スズが別れを告げた時、流した涙の意味はなんだったのだろうか?
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