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第二に、
《「この世界は、選抜者がいることで、絶滅からまぬがれる。」》
という部分にも注目したい。
その理由がある為に、天使は現実世界に選抜者をスカウトに行くというのだが。
実は、ここにも裏の意味が隠されている。
そもそも“絶滅”とはどういうことだろうか。
岳は例のごとく「戦時下で人がすぐ死ぬからね」と納得してしまうのだが…。
国同士世界中が戦争し殺しあっているとしても、両陣営で相当な数の人間がいるはずだ。
はるばる日本に空襲に来る程度には大量に人がいる。
そもそも普通の戦争では人類は絶滅しない。戦勝国と敗戦国に分かれるだけの話である。
万が一大量破壊兵器を撃ち合ったとして絶滅することはあっても、それは選抜者の数とは関わりがない。
天使の発言はつまり、戦争は関係なく“選抜者がいること”が世界が成り立つ必須要因であり、“選抜者がいなくなれば世界が崩壊する”と言っているのだ。
先程の精神世界論と併せると、この仮想世界は“天使がスカウトしてきた選抜者の精神エネルギーで構築されている”のであろうと思われる。
戦争など実は、これっぽっちもしてないのではないか。
世界を維持するためには、選抜者を集めて長生きさせ管理する場所(=工場)と、選抜者をコントロールする仕掛け(=戦時下の危険性と幸福論)がいる。
天使は文字通りこの仮想世界を維持しようとしていたのだ。
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