守護天使

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実はこの世界に於て、魔法が使える人物がもう一人いる。 そう、天使雅恵流だ。 常人とはとても思えない名前を持つ彼だが、彼もまた最初から天使…つまり世界の守護者であったわけではないかもしれない。 “天使のケータイ”を手にしたスズが新たな“天使”になるということは… “ケータイ”を手にするまで、彼もまたスズのように“迷い人”であった可能性が高い。 《「君たち………選抜者は、この世界で暮らすうちに、現実世界を忘れてしまう。現実世界に残った肉体は、やがて意思を失い、不遇の死を迎えるのだ。」》 天使には実体がない。 岳を勧誘に突然現れた時、残暑の中厚手のコートを身につけ汗一つかかない。 彼は最期まで全く同じ姿をしている…まるで幽霊のように。 《「放っておけば、君たちは、ふたつの世界の均衡を破壊する。そうなる前に、ここへ来るように仕向けたのだ」》 なぜ彼は削除ボタンを押さずに岳達を決戦の場へ呼び寄せたのか。 岳達には現実世界に戻してもなお世界のバランスを崩す能力があるとでも言うのだろうか。 《「どちらの世界でも不要となった者は、ここで処分される。」》 仙人は削除をしたのに、岳は自身が処分しなければならない理由があるのだろうか。 …しかも結果として倒されたのは天使であり、処分されたのは自らなのだ。 天使はやはり“迷い人”だったのではなかろうか。 岳達に投げ掛けた言葉は、実は自分自身へ向けた隠喩ではないのか。 “ケータイ”を手にし世界をコントロールするには、本記名された人々では出来ない。 二つの世界を行き来し人類を導くには“迷い人”でなければならないのだ。 この後は仮説の上に仮説を組み上げた妄想でしかないが… 世界の管理者となった天使が何を想い願うのだろうか。 そこを考えてみたい。 人類を救うはずの世界を維持するため、全ての時間を彼は費やし続けなくてはならない。 気付いた時には肉体も失い、唯一人よるべなく、唯人類の為に働き続ける…。 彼が望むこと、それはいつしか自身よりも“天使”にふさわしい人物を探すことになっていったのではなかろうか。 自身が先代の天使から引き継いだように… そして疲れはてた翼を休めるために。
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