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衝撃のラストでは、スズの裏切りとも言える中年男との待ち合わせを見せられ、岳はナイフを手に衝動的にスズを刺してしまう…!
今までの主人公の明るさや快活さを考えると、一見突拍子もないように見えるこの凶行。
しかし考えるにつけ岳のこの行動にはリアリティがあるようにも思えてくる。
岳は純粋無垢な青年である。
大学に入ったばかりで社会にも揉まれず、象徴的な冒頭の魚釣りのシーンを見るまでもなく―青年というよりは、少年に近い。
異世界で怪物に遇っても“モンスター”と認識し《「いわゆるバトル!?ファイナルファンタジー?」》とすぐさま順応する辺りを見ても、柔軟な感受性の高さと、思考の幼さが見てとれる。
憧れのヒロインスズへの対応を見ても、まるで中学生であるかのような純粋でぎこちないアプローチで女性経験の少なさを伺わせる。
そうした純粋な青年が、恋い焦がれる彼女の不実さを目の当たりにし、ナイフを手に衝動的に彼女を刺す――間男ではなく彼女を刺してしまう、というところが妙にリアリティがある。
この行為には自分の偶像とも言える“彼女”が“汚れて”しまい、自分の手に戻したい、自分の手で浄化したい、という憐れな男性の独占欲がよく表されている。
※これが逆の立場であれば、岳がもしも女性であれば、ナイフで狙うのは恋人ではなく恋敵を狙うのが自然に思える。
あのシチュエーションで岳の手に凶器があれば…結末がこうなる可能性を想像するのは難しいことではないはずだ。
憐れな岳は踊らされるまま、スズを刺してしまうのだが…。
言うまでもなく事件の張本人はスズである。
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