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しかし、麻衣子は大きな瞳をぱちくりさせながら秋村の語りを聞いていた。文人は、もしや、と思いながら彼女を観察し、案の定、そのもしやが的中してしまった。
昨日の晩に、机の上に置いてあった文人の携帯が鳴り出して、着信を確認すると麻衣子からだった。
「もしもし」と言ったあと、すぐに本題に入った彼女。
「どうせ明日、暇でしょ? アキムーが言ってた場所、行くよね? そうかそうか! さっすがフミ! うん、決定!」
といった具合いに、文人が一言も喋らないうちに予定が決まり、新作ゲームを買いに行くという楽しみが消えた。この悲しみをどこにぶつけようかと考えたが、あいにく麻衣子よりも恐ろしい姉が家にいたので、暴れてやろうという試みは失敗に終わった。
そして今日、というより今、文人と麻衣子は、目的地に辿り着こうとしていた。
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