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文人が考え終わらないうちに麻衣子は、四角い口を大きく開けている入り口に侵入していった。
「おいおい、まいこ……」
麻衣子の、勝手に一人で突き進んでいく性格にはもう慣れてしまったが、こんな見知らぬ店に入るときくらいは慎重になってほしい、と文人は思う。しかし、だからといって置いていかれるわけにもいかないので、麻衣子が向かった右手のほうに文人も急いだ。
麻衣子は木造の棚に並んでいる靴たちを真剣に選んでいた。どう見ても、麻衣子が手にとって裏返したりサイズを確認しているのは男ものなのだが、なぜ女ものを探さないのか不思議だ。
文人は麻衣子の隣に体を位置づけて、視線をゆっくりと動かしながら革靴やスニーカーを視界に入れていった。
そうしていると、店内の奥のほうで椅子に腰をかけているおじいちゃんと目があった。レジらしきところのすぐ側でこちらを見続けていたのだろうか、目線を文人や麻衣子から離そうとしない。
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