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体格的には少し痩(ヤ)せていて気の良さそうなおじいちゃんだが、どうしてかその二つの黒い瞳には、吸い込まれるような何かがあった。まるで、自分の全てを見透かしているようなそれに、ざわざわと鳥肌が立ってしまった。
気味の悪いじぃちゃんだな……。なんだあの目、しかも俺ばっか見てくるし──、っておい、じぃちゃん……俺にはそんな趣味は……。
新しい世界にはまだいきたくないと、しっかりと否定してから視線を靴置き場に戻した。そのとき──
「わぁ! フミ! これなんかどう? この藍色なんか綺麗だし、フミにもピッタリだと思うんだよねぇ」
一瞬だけ麻衣子の声の大きさに驚いて、チキンと名高い文人の心臓が、一気にスピードを上げた。
「うん!? あ、ああ。そうだな?」
「……こらぁ! どうして疑問口調になるのよ。嫌なら嫌だって言っていいからね?」
「あ、うん……」
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