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朝、電車に乗り、始発駅の特権で座席に座り足を組む。
MP3プレーヤーから流れる音楽に耳を傾けながら、日課である忘れ物チェックを行った。
出発まで後三分か……。
「おっと……」
出発時間に気を取られて取り出した生徒手帳を落としてしまう。
はぁ……と溜め息を吐きながら腰を曲げ、拾い上げる。
そのついでに真新しい生徒手帳を改めて読んでみた。
『県立嵐山高校
一年七組
一ノ瀬 孝徳 』
「……高校か」
小、中と流れる様にあっという間だった気がする。
小学校は……特にない、幼なじみはいたがお嫁さんになってあげる、など冗談でも言えるような仲ではなかった。『普通』。
中学校は……ああ、まぁ『普通』かな。
小学校上がりたてというのもあって一年はやんちゃだったと思う。二年は周りが不良気取りの奴ばっかで合わせるのが大変だった。三年は……趣味が会う奴が多くて『普通』に楽しかったかな。
そんな同中の奴等とも別れ、俺は一人でちょっと遠い嵐山高校に通い始めた。
二ヶ月も通えば慣れたもので、今では遅刻ギリギリの電車に乗るようになってしまった。
「……」
ガタンという音と共に電車が走り出す。これから二十分の電車の旅だ。
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