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残念ながら降りる駅は終点ではないため、幾度なく襲い来る睡魔と闘うこと二十分、目的地に着いた。
電車を降りるのでMP3プレーヤーの音を少し小さくしてからホームに足をつける。
と同時に電車が発車し、人混みに紛れながら階段を降りる。
乗り換えの為ホームを移動。途中で買った飲み物を口に含み電車を待つ。この時間が、一番怠い。
余りの怠さに睡魔に身を委ねかけた時、トントンと肩を叩かれた。
目を開け、イヤホンを耳からはずす。
「おっす、一ノ瀬」
「おはよ」
名前は荒川、高校に入り初めてできた友達である。
顔は別段格好いいわけではない、どちらかと言えば不細工な方だろう。
かく言う俺も格好良くはないが。
「英語の予習やった?」
「やってね、昼休みにでもやる予定」
「だよなー」
そんな世間話を荒川としながら、俺は電車に乗った。
ここ、県立嵐山高校は至って普通の高校である。
生徒数は千人強、敷地面積も普通、偏差値は五十前後。
俺がこの学校を選んだのは親に進められたから。
正直高校なんざどこでもいいと考えていた俺に拒否する理由などなかった。
靴を履き替え階段を登り三階の教室へ向かう。
ガラガラと戸を開け、自分の席に着く。
因みに荒川も一緒のクラスだ。
置き勉主義者な俺は鞄から筆箱だけ取り出し、いつものグループの話に混ざった。
荒川や他の友達と話していると、担任が教壇に立ち、SHRが始まった。
――――……ああ、また平和で退屈な日々が始まるのか。
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