春支度

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  「ハァ…」       手が悴んできた。   息をかけて手を擦りあわせる。         「寒いの?」       背後からの声に多少驚き、振り返る。   声の主は全く知らない男の人だった。       「え……?」     「コレあげるよ」       そう言って、差し出されたのは使い捨てカイロ。       「いえ、でも…」     「いいからいいから!」       半ば無理矢理手に握らされる。       「じゃ、俺はこれで!」     「え?あ、ちょっ……!」       彼は走って行ってしまった。       「名前くらい言ってってよ」       ぼやきながらカイロの袋を破る。   暫くしたら温かくなった。   冷えきっていた手は熱を取り戻し、その手で頬に触れれば頬も熱を取り戻す。     …………あれ?       「何かドキドキしてる…?」       この温もりをくれたのはあの人。   このドキドキは、何処から…何からきてるの?     意識すればする程にドキドキする。   これってまさか……。      
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