2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハァ…」
手が悴んできた。
息をかけて手を擦りあわせる。
「寒いの?」
背後からの声に多少驚き、振り返る。
声の主は全く知らない男の人だった。
「え……?」
「コレあげるよ」
そう言って、差し出されたのは使い捨てカイロ。
「いえ、でも…」
「いいからいいから!」
半ば無理矢理手に握らされる。
「じゃ、俺はこれで!」
「え?あ、ちょっ……!」
彼は走って行ってしまった。
「名前くらい言ってってよ」
ぼやきながらカイロの袋を破る。
暫くしたら温かくなった。
冷えきっていた手は熱を取り戻し、その手で頬に触れれば頬も熱を取り戻す。
…………あれ?
「何かドキドキしてる…?」
この温もりをくれたのはあの人。
このドキドキは、何処から…何からきてるの?
意識すればする程にドキドキする。
これってまさか……。
最初のコメントを投稿しよう!