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あの時の出来事は、多少靄に掛かりつつも覚えている。
こけかけて美羽を押し倒す様な形になってしまい……
(柔らかかったな……)
「兄さんっ、そ、そこは思い出さなくて良いの!!」
顔に出てしまっていたらしく、美羽が紅くなりながらワタワタ止めてきた。
まぁ、確かにあれは恥ずかしい記憶だ。
もしあのタイミングで球技大会係の生徒が来てくれなければ……
語れない様な事態になってたかもしれないな……。
…………………考えれば考える程、恥ずかしい記憶だ。話を変えよう。
「そ、それはさて置いて、俺はちゃんと覚えてるけど、それがどうかしたのか?」
「……う、うん」
美羽も話を逸らしたいらしかったからか、簡単に頷いてくれた。
「ロッカーから出た後にさ、私が……に、兄さんに目を瞑らせた事も、覚えてる?」
そしてそう質問してきた美羽。
ああ、そんな事もあったな。
「覚えてるけど、あれで美羽が何をしたのかは見当が付いてなかった気がする」
俺はそう答えた。
これは紛れもない事実だ。
あの時、何で美羽は目を瞑らせたのか、一体何をしてきたのか、今でもサッパリだ。
そんな俺の回答を聞いた美羽は、少し何かを迷っていた様だが、
すぐに決意の表情をして顔を上げてきて、俺に言ってきた。
「そ、それなら……………再現、する?」
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