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マリは夕べ着ていた私服をバッグにしまうと、学校にゆく支度ができた。ぼくは厚手のコットン・シャツにカーディガンとジーンズ。片手にギター、肩にショルダーバッグを下げて、片手にごみ袋を持ってアパートを出る。マリはバッグを駅のコインロッカーに置いてゆくと言う。 外は天気が良く、朝の少し冷たいくらいの空気が美味かった。 「はい、お小遣い」とぼくはポケットから五千円札を出してマリに渡す。 「わっ、ラッキー。でもお兄ちゃん大丈夫なの・・・?」 「なんの、また歌って稼げばよい」と脳天気な気分で精一杯の虚勢。 「今度、友達をつれて唄、聞きに行くね」 「うん、あの人たちによろしく」と幾分他人行儀に両親のことを頼む。 「たまには帰ってきてね。同じ市内なんだから」とマリ。 ぼくはマリと連れだって駅前まで来て別れた。マリのプチ家出は終わった。
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