プロローグ

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ぼくは今日も夜更けの街にささやかな子守唄を歌い続ける。 ぼくは都心のベットタウンであるM駅の駅ギャラリー通路の片隅で、疲れ果てて帰り道をいそぐサラリーマンさんやオフィスレディさんに向かって今日も歌い続けている。 ぼくの目の前置いてある譜面台には古いフォークソングから最近のヒット曲までの、ぼく自身の選んだベスト・ラヴ・ソングのレパートリーが一冊のノート・ブックとなって乗っている。 もちろんオリジナルの曲がないわけではない。しかし、ぼくの目の前をさりげなく通り過ぎ行くひとびとに、ぼくの言葉はまだとどかない。 ぼくはリン。本当は香坂凛という名前で年は十九歳、職業自称シンガーのフリーター。 歌で食えないからまだアルバイトをやっているだけのこと。
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