マリのプチ家出と「グルーヴィ」にて

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いまどき、髪を染めていないマリをぼくは潔いと思う。茶髪で、よく電車の中で鏡をとりだしてアイメークしている高校生をみると何かおかしい。携帯電話を片手に、人前でまつげの処理をしているのなんて最低だと思う。マリは女の子だから緊急用に携帯電話は持っている。でも、ぼくの生活に携帯電話のつけいる余地はない。 ぼくはギターをていねいに拭いて、ケースに入れて、部屋の隅に立てかける。マリは携帯のメールに目をとおしてその返信をしている。ぼくは「グルーヴィ」からもらってきた一日遅れの新聞に目を通す。世の中は殺人事件と年金問題に沸きかえっている。 しばらくして、明日早いから、とぼくは六畳の部屋に布団を一組だしてマリのために用意をする。マリのおかげで今日のぼくの布団はシュラーフに変わる。毎度のことだ。可愛い妹のため。シュラーフ、密やかな旅への憧憬。 「お兄ちゃん、ごめんね」と殊勝なことをいうマリに、洗いざらしのジャージを渡す。
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