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2人は笑いあいながら、教室へと入っていく。席はどこでもいいらしく、蒼空はいつもと変わらない一番後ろの窓際の席に座る。その前の席に司が座った。
「ふぅ。やっぱりこの席が一番落ち着くな。」
「昔からこの席だったしな。その……何かあった時のためとかって。」
司があとの言葉をまわりに聞かれないよう小さく言った。
「まぁ、ね。いつ昔みたいになっちゃうか、わからないしね。」
蒼空もあまり言いたくない言葉を口にしたせいか、声が小さくなる。
その時ガタンと彼の隣の席に、1人の女の子が座った。その子とバッチリ目があってしまい、蒼空は反応に困った。
「私、春野 彩華。よろしくね。」
蒼空は我にかえり、"いつも"の調子で言葉を返す。
「……僕は、大河 蒼空。」
「オレはコイツの親友の水谷 司(ミズタニ ツカサ)っ。よろしくなっ!」
司は蒼空を抱きよせて、にこやかに笑ってみせた。
「おいっ、司っ。抱きつくなってばっ!!」
「いぃだろぉ?別に。」
「よくなぃっ。離れろぉっ。」
そんな2人の姿を見て、彩華は不思議に思った。自分に対して言ってくれた言葉も姿もとても冷たい感じかして嫌なのに、司と話している時の彼の方が本当の姿のような気がした。
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