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――『話かけたらすっごい顔で威嚇してくる狼みたいな奴らしいよ?』
友達が言っていた言葉が、今ならそうではないかと思えてしまう。それとも何か理由があって、そう言ってしまっただけなのか……彩華にはわからなかった。
「おいっ!待てってば、蒼空っ!!」
蒼空の肩をようやくつかんで、走る彼の足を止めさせた。
「おまえっ、走るなんて自殺行為するなよっ!!」
「……司。――――っ!?」
蒼空は司に何かを言いかけて、激しく咳き込んだ。胸のあたりが何だかしめつけられているようだった。
「蒼空っ、おぃ、大丈夫か?」
司が心配そうにそう言って、蒼空を見つめる。
やっと落ちついてきた蒼空は、司に笑ってみせた。
「大、丈夫。ごめん、司。」
いつもの彼なら、こんな自分を苦しめるような行為などしない。自分の身体の事は自分が一番よく知っている。
でも蒼空は、あの場から逃げ出したかったのだ。一秒でも早く―――。
「おまえらしくない行動だな、ありゃ。何も自分の事知らないでバカをみた、小さいガキみてぇ。」
「おい……。それって遠回しに僕がバカだって言ってるだろ?アレは小さい時の話だろ?」
「それは小さい時の話であっても、今のおまえはバカだな。」
司が冷たい視線を蒼空にむけた。
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