2話 蒼空と彩華

6/7
前へ
/100ページ
次へ
「おまえ、あの場から逃げちまってよかったのか?あの子、きっと傷ついてるぞ。あの時のおまえは……オレでもなんか怖かった。」 「………司。」 「蒼空、おまえはこのままでいいのか?ずっとあの子に……"いつもの"調子でい続けるのか?」 そんなこと、言われなくてもわかっていた。自分がどうするべきなのか、なんて。でも――。 「わかってるよ、そんなコト。でも僕……怖いんだ。司や藤岡先生以外に、心を開くのが。」 司が優しく、蒼空の肩を叩いた。 「怖がるな、蒼空。おまえが一歩をふみ出さなきゃ、何もかわらないぜ?大丈夫、オレがついてるんだから。」 司の優しさが、蒼空にはとても嬉しかった。いつもの彼もそうではあるけれど、今の蒼空にとっては、いつも以上に強くそう感じたのだった。 この親友の存在がなければ、きっと今のように学校に元気な姿でいるなんてなかっただろう。ずっと病院や家の中でひきこもっていたかもしれない。 蒼空にとって司の存在は………とても大きなものだった。 次の日、彩華はいつものように声をかけてこなかった。昨日あんなに冷たい態度を取られたのだから、きっとショックを受けたに違いない。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

326人が本棚に入れています
本棚に追加