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「がんばる」とは言ったものの、何をどうしよう?実際何も思いつかなかった。蒼空の家場所とか、ケータイ番号とかメルアドを知っていたら何かと方法はあるけれど、全て不可能な事ばかりで八方ふさがりだった。
再び息をついて、窓の外を見やる。
―カタンッ・・・。
持っていたケータイが手をはなれ、床に落ちた。窓の外に映る光景に彩華はくぎづけになった。道を今歩いてるのは先はどのような小さな子供達ではなく――――。
「・・・・蒼空?」
制服ではないラフな格好で、蒼空はとぼとぼと道を歩いていく。傍にいつもいる親友の司の姿はなく、彼一人だ。いったい彼はどこに行くのだろう?彩華気になって家を飛び出した。
てっきりショッピングにでもきたのかと思ったが、彼は商店街の店には見向きもせずひたすら歩いていく。そんな彼を、彩華は「こんなストーカーみたいな真似してもいいのかな?」とか思いつつもここまで追いかけてきてしまった。商店街は休日の日は町の人で賑わっていて、少しでも油断すると彼を見失ってしまいそうだった。
若い女性に人気のジュエリーショップを通りかかった時、店員らしき若いお兄さんに行く手を塞がれ、声をかけられた。
「そんなに慌ててどちらへ?お嬢さん?君可愛いから似合うアクセサリーがきっとココにあるよ。」
前を行く蒼空の姿が人ごみで見えなくなっていき、彩華は焦る。
「ちょっと通してくださいっ!私・・・・急いでるんですっ!」
店員らしきお兄さんを振りきり、彩華はキョロキョロとあたりを見回し蒼空の姿を探した。蒼空はもうかなり前の方にいて、商店街通りの終わりの道から左へ行ってしまうところだった。彩華は慌てて追いかけ同じように左に曲がる。しかし、曲がった先に彼の姿はなかった。
「え・・・。確かに左に行ったと思った、のに。」
曲がった先は公園と、街で一番大きな総合病院とマンションが立ち並ぶ住宅街だ。
「――――あ。」
あたりを見回していると、思いもよらぬ所に彼はいた。蒼空は総合病院の入り口から中に入って行く所だった。彩華はまた追いかけようとしたが、できなかった。こんな所に来るという事は誰かのお見舞いか、自分の為のどちらかだと思い、用もないのにただ蒼空を追いかけてきただけの自分が行くべきではないと思ったのだ。けれど前者はあり得ても、後者はありえないと思った。
だって彼は―――いたって元気そうに見えたから。
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