3話 変わる二人、隠し事

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 彩華は病院入口前にあったベンチに座り込んだ。辺りはちょっとした庭になっていて色んな花や木々が植えられていた。看護師さんが車椅子に乗った患者さんを連れて歩いて行ったり、片腕にギブスをつけて布で肩から腕を固定して庭を歩いていく病衣を着たお兄さんがいたり、一服をしに外に出てきた医師が煙草を吸いながらペラペラと話していたりと、病院では当たり前の光景が目に映る。 「・・・・蒼空。」  彩華はそっと彼の名前を呟いた。    ☆   ☆   ☆  診察室に通され、蒼空はすぐ傍の椅子に腰かける。 「・・・・藤岡先生、アレやめてもらえませんか?」  蒼空は背を向けている白衣を着た医師に不満をぶつけた。  医師はクルリと椅子を回転させてこちらを向いた。顔は若く、病院内で看護師からの人気があるくらいの美形だった。長い髪を後ろで一つにまとめ、眼鏡をかけていた。歳は二十代後半らしい。 「あぁ・・・・昨日の事は悪かった。だが少し気になってしまってな。」 「・・・・・。」  蒼空の心の中に不安が広がった。こんな風に先生に言われたのは・・・何年ぶりだろう? 「っと・・・すまない。別に大したことじゃないからな、蒼空?」「じゃあ何なんですか、藤岡先生?」  蒼空が不機嫌そうに先生をじっと見つめた。  藤岡はカルテを手に取り、ペンで何かを書き込みながら言う。 「この間の定期検診の結果の数値が少々いつもより低かったからな。しかし昨日の再検査の結果を見る限りでは、特に問題はないな。」 「・・・・そう、ですか。」  心の奥でそっと胸をなでおろす自分がいた。いつもは気にしないでいても、やっぱり自分がそういう脆い体だって事に怖くなる。そして何より自分を生んでくれた母親は―――。  場の空気がなんだか重くなり、藤岡は蒼空のおでこにデコピンをかました。 「つっ・・・たっ!何するんですかいきなりっ!!」  ダメージを受けたおでこを手で押さえながら文句を言った。 「昨日、かなり注目浴びたんだろう?」  ケラケラと笑っている藤岡の姿がなんだかムカついた。先生のくせになんて人なんだと思うけれど、そうやって親しげに話してくれる彼が好きだった。
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