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「そりゃ注目されましたよ、みんなにっ!それに・・・彩華にだって―――。」
最後のあたりはボソボソと声が小さくなっていく。
ちょっぴり照れたようにしている蒼空を見て、藤岡はピンときた。
「蒼空も男になったという事か。その子・・・・大切にしなさい。」
「先生、でも僕・・・・まだ言ってないんだ。」
「君が好きだっ・・・・ってか?」
蒼空はますます顔を赤らめて、否定する。
「ちっ・・・違うよっ。それじゃなくてっ―――。」
「わかっている。体の事だろう?・・・・その子が本当に大切な人だと思うなら、ちゃんと言ってあげなさい。きっと彼女も君の事を知りたがっているはずだよ?」
☆ ☆ ☆
ここに座り込んでからどれくらいの時間がたっただろう?いつまで待っても入口の方から蒼空が出てくる様子はない。不安ばかりが心の中を埋め尽くしていて、彩華は追いかけてこなければよかったのかと思いはじめていた。司のように小さい頃から一緒にいた訳でも家族でもない自分は、彼のプライベートな事を知ろうとするなんて図々しのかもしれない。色んな考えが頭の中をぐるぐるして、何をどうしていいのかわからなくなっていた。
―――その時。
「あれ・・・・?彩華、こんな所で何してるんだ?」
蒼空が不思議そうな顔で、彩華の顔を覗き込んだ。
「!!―――蒼空っ!」
彩華はいきなり話しかけられたのと、それが蒼空だった事に驚きを隠せなかった。
「彩華も誰かに会いに来たのか?」
「それは・・・・蒼空に会い――――。」
彩華はつい出てしまった言葉に恥ずかしくなって、顔を赤らめた。
「え・・・・。」
蒼空は一瞬何を言われたのかわからないでいたが、やがて理解したらしく彼も顔が赤くなる。
「「・・・・・。」」
お互い顔が赤くなるばかりで、何も言えなくなってしまった。目が合ってはすぐに逸らしてしまう。だが先にその状態を変えたのは蒼空だった。
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