2話 蒼空と彩華

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しかしその反面……「かわいそうだね」と同情して、義理的に優しくしてくれるだけになるのではないか?という恐さもあって、蒼空はその一歩を踏み出せずにいた。 「――ぃ。お~い、聞いてる?大河君?」 顔の前で手をパタパタと振られて、蒼空は我にかえった。 「え……何?」 「だーかーらー。今度の体育の授業の話だよ。」 体育?蒼空は記憶をたぐりよせ、昨日の時に司がそんな話をしていた事を思い出した。 『蒼空ぁ、今度の体育の授業、男女ペアでやるって話聞いたか?クラスの女子と仲良くなるチャァァァンス!!』 『ちょっ、チャンスってなんだソレ。お前、誰か気になる奴でもいるのか?』 『それはお前の方じゃないのかよ?蒼空。』 司になんだかからかわれた所はよく覚えていた。 アイツめ……いつか仕返ししてやるっ。 「あぁ……。男女ペアでどうこうってやつのコトか?」 「そうそれー。だからさ、そのぉ~。」 彩華が言葉をにごした。言っていいものかと悩んでいた。最近やっと色々話してくれるようになったばかりなのに「一緒にペアになって!」なんて図々しいような気がして、なかなか口にだせない。 「……何?言わなきゃわからないだろ、おまえ。」
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