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世界規模の大会社、華月カンパニーと言われればほとんどの人が知っている。
その大会社の社長と社長秘書を父と母に持つのが僕、華月信也だ。
我が家の莫大な資金を使って建てられた香陵学園に僕は通っている。
もちろん、僕は学園ではちょっとした有名人だ。
いろんな意味で。
「時間か、これで終わるがここはちゃんと復習しておくんだぞ」
休み時間に入って一気に騒がしくなる教室。
その中心には僕の幼なじみがいる。
初朝小鳥。
そめあさことり、それが彼女の名前だ。
小柄で無口、無表情。
毛の長いマルチーズによくある後ろ髪を一束だけ結わえた髪型。
特出したものはない。
そのルックスを除けば。
彼女の母の名は初朝雛鳥。
華月カンパニーのCM全般をほぼ一人でこなすほどの美貌の持ち主だ。
いつもうちの親と世界を飛び回っている。
小鳥もその恩恵を受けて人並みはずれたルックスだったりする。
並ぶ者がいなければ注目を受けるのは当然だ。
学園内ではそこらのアイドルよりも人気がある。
だから別に珍しい光景ではない。
けど、僕は何故だか目が離せなかった。
「あ……」
─────まずい。
僕はすぐに席を立った。
小鳥は僕と目が合うと話しかけようとしてくる。
滅多に口を開かない彼女が僕と会話なんてしてしまったらあっという間に噂になる。
それはだめだ。
それじゃあ、
・・・・
十年前の意味がない。
彼女は僕と関わってはいけないのだ。
わかっているはずなのに、どうして僕と関わろうとするんだろう。
そんな疑問を振り切るようにホームルームに出ることもなく、そのまま帰宅した。
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