1.輝かない月

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       ☆  基本的に、親が家にいることはあまりない。  一週間に一度会えればいい方だ。仕方ない。あの二人は忙しいのだから。  それに便利なことだってたくさんある。  なにもかもを自分のペースで出来るし、  ・・・・・・・・・・・・・  普通の学園生活を送っているなどという嘘もバレないで済む。  まぁ、嘘と言うほどでもないのだけど。  さて、食事というのは人格を形成する大事な要素だ。  ちょっと普通とは違う生活をしていて、これで食品が毎日レトルトならグレてしまうという簡単な選択肢もあったのだろう。  けれど毎日毎日寝る間もないくらいに働いて、たまに帰ってきた来た時に一週間から二週間分の食事を作って冷凍しておいてくれるのが僕の母だ。  そんな人を裏切るなんて選択肢は僕にはない。  僕はそんな両親を尊敬して────。 「……? なんだろう。手紙?」  机に置かれた一枚のメモ書き。  手にとって読んでみる。 ──────信也へ   少し長く休みをとったの。       だから 今日からEUへ旅行に行きます!         母より───  特徴的な丸文字で書かれたその紙を落とした。  意味が分からない。  正直に言おう。  母には秘書は向いていない。何故なら異常なくらいアバウトだから。  あの人の少しは常人にとっては信じられないくらい過剰な事を示す。  さて、どうにかして連絡をとらなくては。        ☆ 「ええ、ええ。はい…いえ。わかりました。……大変だとは思いますが、がんばってください」  母の性格と父さんの仕事量を考えれば当然なのだけど、秘書というか父さんの左腕的な人もいる(右腕は自分だと言って母さんがきかないため)。  その人に連絡を取ったところ、会社はパニックになっているということがわかった。  大事な商談が一段落した(らしい)とはいえ、ここまでの大会社が活動を止めたら世界的な問題だ。  父さんが置いていったメモ通りにしているから今は大事にはなっていないそうだ。  けれど電話口のあの人の泣きべそを聞くかぎりかなりいっぱいいっぱいなようだ。
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