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どういうつもりなんだろう。
本当の状態がバレるということは、それを黙認していた先生が責任を問われる可能性があるということだ。
それだけじゃない。
最悪の場合、事実を知っていた小鳥だってなにか被害を受ける可能性があるのに。
……知っているのだろうか。十年前、僕があんなことを言ったわけを。
だとすれば確かに最高の脅し文句なのだけど。
けれどあの普段ぼーっとしている小鳥がそんなことに気付くのだろうか。
「信也」
「……何?」
ダイニングキッチンというのは不便だ。どうやっても顔をあわせることになる。部屋に戻るのも逃げたみたいで嫌だし。
「アレルギーと…嫌いなものは…?」
「昔と変わってない」
わざとわかりにくい返しをしてみた。
小鳥はこくりと頷くとぼそりと呟く。
「トマトと…ほこり」
合っている。
僕はアレルギー性鼻炎で、ほこりが舞う部屋に入ると涙と鼻水が止まらなくなる。
「じゃあ、トマトは…入れない」
「いいんだ? 面倒見るんじゃないの?」
好き嫌いをなくすくらいならやりそうな気がしていてかなりおっかなびっくりの質問だったのだけど、小鳥は全く予想外の答えを返してきた。
「栄養は…トマトにしかないわけじゃない。食べたくないなら、別の物で代用する。食事は…楽しいほうがいっぱい食べる。いっぱい食べたら…栄養いっぱい。ね…? そうしたら、信也は明日も元気。私も嬉しい」
昔からたびたび見せていたこの小鳥理論は何故か最後の結びで『私も嬉しい』が入る。用は、自分が嬉しいか嬉しくないかで彼女は事象を判断しているのだ。
「卵焼きは…?」
「……甘いのがいい」
「すごい。何を聞きたいかまだ言ってないのに」
わかるさ。
わからないはずがない。
「お味噌汁は…?」
「両方」
「煮干しと…?」
「かつお節」
小鳥は昔から料理が得意だった。いや、好きだった。
親がいなくて寂しい日はお互いどちらかの家で泊まりっこをした。その時はまだサラダと卵焼きとお味噌汁しか作れなかった。
けれど、逆に言えばいつもこの質問は受けていたのだからそれこそ条件反射で返せる。
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