第一夜

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あれから帰って死んだように眠った。 手には生々しい感触が残っていて、身体中赤い『液体』で染まっていた。着ていた物を洗濯機に放り込み、シャワーを浴びてから着替え、ベッドに倒れこむ様にして意識を無理矢理飛ばした。 起きた時、また夜中だった。携帯電話の日付が1日進んでいる所を見ると、丸1日眠っていたようだ。 「……」 ベッドの横に放り投げられた『物』に目をやる。 いつまで続ければいい?終わりはくるのか? そんな事は最初から考えてなどいなかった。心を殺して操り人形のように動いてればいい。 誰の為でもない。 アナタの為に…。 月曜日、会社は連続殺人の話題で持ちきりだった。いつまで続くのか、警察は何やってるのか、そんな会話があちこちから聞こえてくる。関心がないのは少し不自然だろうかと思い、技術部のフロアでは話に加わる様にした。 「おはようございます」 「おはよう」 いち早く返事を返してくれたのは部長だった。そして自然に話題が持ち上がる。 「佐藤、気を付けろよー。巷じゃ殺人鬼がうろついてるからなぁ。あ、佐藤は強いから殺人鬼も逃げ出すか」 「部長ー、私これでもか弱い女の子ですよ。部長こそ気を付けたほうがいいですよ」 「なんだとー!!」 部長は笑いながら拳を振り上げた。最初に話し掛けてくれたのが部長で助かった。部長は冗談が通じるので、話も真剣みを帯びない。軽く話題に触れて、そのまま話を終えることができる。 出社した時に持ちきりだった話題も、仕事が終わる頃には殆ど聞かなくなっていた。それだけ関心が薄れてきたのか、はたまた新しい話題でもあるのか。今回は後者だった。 話によると、どうやら近々大きな人事異動があるらしい。
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