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〈5月7日 PM11:51 徳島市内裏通り〉
恐らく公園に住む人の一人だろう。
その中年男性は封を切ってない新品の煙草を手に握っていた。
「オッサン。いるかってのはその煙草の事か?」
俺が目を細めて尋ねる。
するとオッサンはニカッと笑って、
「勿論金は取らねぇぜ?
一箱余ったから分けてやるだけだよ。
どうだ?ん?」
「いらな「いるっ!!」
俺が断ろうとしたら総司が勝手にもらいやがった。
「あっ、バカ!
オッサン、いらねぇから返…す…って、いない?」
俺が向き直った瞬間にオッサンは消えていた。
総司はと言えば、貰った煙草を目を輝かせながら眺めている。
ご丁寧に、ライターまで貰ってやがる。
「おい大我見ろよ。本物の煙草だぜ?」
「それくらい分かってる。
で、どうするんだ?吸うのか?」
すると総司は妙な声で笑いながら言った。
「ふはははは…。愚問だな。」
俺はため息を吐く。
何故なら今の日本ではどんな小さな罪でも犯した時点で極刑…つまりは処刑になる。
だから未成年が煙草を吸うのは勿論、持ってるのも犯罪だ。
つまり、総司は今この瞬間に、処刑確定の犯罪者になった訳だ。
だが今ならまだ引き返せる。
幸い総司はまだ吸っていないから証拠隠滅は可能だ。
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