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その人物は目が合うなり、晶を射殺しそうな視線で睨んだ。
明るい栗色の髪を器用に左側の側頭部でひとつに結い、女性と見まごうような顔立ちをした麗人である。
なぜ女性ではないとわかったかと言うと、体格はほっそりとしているものの、彼は男性的な骨格がわかる服装をしていたからである。
しかし肌は抜けるように白く、正真正銘の女性である晶が見惚れる程に美しい。
切れ長の目は碧玉の如く緑がかっており、厚めの唇は今は不機嫌そうにゆがめられていた。
その視線のキツさに怯んだ晶にはお構いなく、麗人は裾の長いマントを優雅に払って劉備に言い募る。
「このようなどこの馬の骨とも知らぬ娘をそばに置くなど、一国の君主としてあるまじき行為です。いくら諸葛殿の言といえども、わたくしにはこのどこの馬の骨とも知らぬ娘を信用することなどできません」
(む、二回も馬の骨って言いやがったわね・・・)
上記の言で晶は、自分はこの麗人に歓迎されていないことを悟る。
確かに自分は身元が確かとは言い難く(それも違う国の未来から来たなどと言われたら晶でも鼻で笑い飛ばしただろう)、それを証明するようなものも一切ない。
彼が晶を疑うのは至極当然のことである。
当然なのだが・・・もう少し言い様があるのではないかと、晶は唇を尖らせた。
その様を見て、壁際にいた諸葛亮が小さく笑いをこぼした。
・・・羽扇に隠れて真っ黒な微笑を。
(ちょっ!楽しんでないで何とかしなさいよ腹黒軍師ッ!!)
晶の心の叫びを込めた視線に「わかってますよ」といった風な視線が返る。
しかし晶には
(私助ける気ありませんので。せいぜい苛められてなさい)
という、彼の心の声が聞こえた気がした。
だんだん諸葛亮という人間の心情がわかってきてしまった哀れな主人公である。
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