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「晶っ?!!」
悲鳴に似た声が聞こえたのは、そうやってぼんやり考えている時だった。
ああ、心配をかけてしまったんだなと、晶はゆっくりと自らの腕を顔からどけた。
視界に飛び込んできたのは心配のあまり泣きそうになっている尚香の顔だった。
視線が合うと、彼女は心底安堵したように長い息を吐いた。
その行動に、晶の心が痛む。
「良かった・・・まさか倒れるとは思わなかったから驚いてしまったわ。・・・ごめんなさい。軽く話してしまったけど、貴女にとっては軽い出来事じゃないのよね。あたしには貴方の気持ちが全部理解できるわけなんてないけど、配慮はするべきだったわ。本当にごめんなさい」
落ち込んだように俯く尚香に、晶は慌てて問題ないことを伝える。
「う、ううん大丈夫!確かに吃驚はしたけど、自分でもまさか倒れるなんて思ってもみなかったから逆に自分が驚いたくらいだよ」
苦笑しながら言ったおかげか、尚香もいくらか微笑んでくれた。
しかしまだ少し自己嫌悪中のようだ。
悪いことをした、と晶はひそかに反省する。
「晶殿、大事ないか・・・?」
そのやりとりを見ていたのか、おずおずといった様子で劉備が顔を出した。
いつもなら「大事ないか晶殿―――――っっっ!!!!」といった、扉を蹴破る勢いで来るはずの劉備が遠慮がちなことに密かに驚いた晶だったが、なんとか顔に出さずに済んだ。
頑張った自分。
「大丈夫ですよ。・・・ていうかどうしたんですか劉備さん?いつもと様子が違うようですけど」
「いや、いつも元気で朗らかな晶殿が唐突に倒れられたので、もしや何か良くない病なのかと思ってな。医師殿は大事ないと言っていたが、万が一体に障ると悪いと思って・・・」
(成程、気遣ってくれたんだ)
騒がしくすると体に良くないと思ったのだろう。
ゆっくり休ませたいが様子も気になる。
だから恐る恐る声をかけてみた、ということのようだ。
気の使い方が純粋で、なんとも劉備らしい。
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