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「それはあんまりな言いようではないか雲長。見たところ服装も見た事がない物であるし、この地の出身でない事はまず間違いないだろう。それにこのような右も左もわからぬであろうところに女性を放置しておくことなど私の義の精神に背く。何より『あの』孔明が連れてきたのだぞ?怪しい者であるはずがないではないか!」
「確かに、『あの』諸葛殿が連れてきた者ですからね。しかしですね兄者。信用する事と確認することは別物です。確認もせず万が一のことがありましたらいかが致すおつもりですか」
(うわー・・・)
二人して『あの』の部分を強調しまくっている。
しかも、劉備の『あの』には悪意など微塵も感じられないのに、麗人の『あの』にはいかにも不信に凝り固まったオーラが充満している。
味方内であっても滅茶苦茶疑われている光景を見ても、晶は妙に納得してしまった。
(まぁそもそもあの笑顔はどう見ても裏がありそうだからねぇ・・・。あれに気付けないのは劉備さんくらいじゃないのかな。・・・・・・って、ん?今『雲長』って・・・)
しみじみと彼らの口論を見つめていた晶はふと、聞き流しそうになった名を思い出す。
そういえば彼は劉備のことを兄者と呼んでいなかっただろうか。
・・・・・・・・・。
まさかという思いと、この口論に口を挟むという恐怖心から、恐る恐る声をかけようとした晶は次の瞬間、袖を何者かに引かれた。
(え?)
驚いて振り返れば、視界に深海の色が飛び込んできた。
「・・・君、異世界から来たの・・・?」
「え・・・?あ、異世界・・・っていうか、正確には未来の異国から・・・になると、思います・・・けど・・・」
深海の色は相手の瞳の色であり、自分の至近距離にいつの間にか美人が立っていたことに呆けかけた晶だったが、投げられた質問に咄嗟に答えた。
我ながら曖昧すぎる返答だ、と晶は言った後で少し落ち込んだ。
疑われている人間がこのような曖昧な返答をすればそれこそ疑われてしまうだろう。
後悔の念を知らず表情に出している晶を、その人物はじっと静かに見つめていた。
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