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他にも、買い物の時に趙雲が選んでくれたシンプルな雫型の首飾り。
どこからともなく張飛が取り出してきた黒地に花があしらわれた手鏡。
「君のためにたくさん買ってあげちゃうよ」と言いながら魏延が大量に示してきた中で選んだ、鮮烈な色を纏う紅玉を使った帯飾り。
嫌味と親切心が入り混じったよくわからない気遣いの言葉とともに孔明から贈られた碧玉を使用した上品な耳飾り。
それぞれにその当時のエピソードが詰まっているものばかりだった。
(結構長い時間を過ごしてきたんだなぁ・・・)
それらを見るだけで、晶は時の流れを実感する。
半年前は、いつ死んでしまうかわからないと戦々恐々としていた。
そのことが遠い昔のことのように思えてしまうから不思議だ。
装飾品を見つめたまましばらくぼうっとしている晶の手元を、準備を手伝っていた尚香は興味津々な様子で覗き込んだ。
「わあ!どれも素敵な装飾品ね!もしかしてこれ全部子龍からもらったものなの?こんな気が利きそうなのって彼くらいしかいないわよね。あ、でも翼徳は気が利く子だから彼からもらったものもあるのかしら?」
それを聞いて晶は苦笑した。
まったくここの男性陣はそろいもそろって朴念仁扱いのようだ。
きっと孔明や関羽からもらったと言ったら、彼女は目を?くだろう。
案の定説明すると、尚香は目を真ん丸になるほど見開いた。
「うっそあの雲長がっ?!ていうか相変わらず素直じゃないわね」
やはり驚きどころはそこだったらしい。
しかし衝撃が去ると、尚香は途端に優しい表情になった。
例えるなら娘を見守る母親のような眼差しで。
「なんだか凄く大事にされてたのね。これじゃああたしたちの招待に気軽には応じられないのも頷けるわ」
「え、いやそんなことは・・・」
「いいのよ。こんなに可愛がってもらってればあたしだって考えちゃうわ。大丈夫。万が一にも道中で危険なことに遭遇してもあたしが守るし、難しかったら生贄を置いて逃げちゃえばいいんだもの」
「・・・・・・・・・」
父親って全力で虐げられちゃうものなんだな、と晶は孫堅に同情した。
父親どころか最早生贄扱い。
もし現代に戻ることができたら父親にもう少し優しくしてあげよう、と晶は思った。
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