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「・・・大丈夫」
「・・・え?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。
見上げると、何の感情も映さない深海の瞳と再び出会う。
「君は嘘、ついてない。よくわからない場所に来て、すごく困ってる。いきなり呼び寄せたのに、帰る方法知らない孔明がムカつく。・・・ムカつくって意味、よくわからないけど。でも君の心がそう言ってる。それ、嘘の色してない。だからそれ、二人に教える。そうすれば安心、ね?」
無表情で、少し片言気味ではあったが、深海の瞳が少し優しい色を湛えた気がした。
だから晶は、小首を傾げて聞いてきた相手に、とっさに頷いていた。
「は、はい!・・・ありがとう、ございます・・・!」
知らず笑みを浮かべていた晶が、深海の瞳に映る。
それを見て安心したのか、相手は初めて微笑の形に表情を崩し、未だ口論を続ける二人に歩み寄って行った。
一方、晶はと言うと・・・。
(なっ・・・何今の何今のッッ?!!!)
最後に向けられた淡すぎる微笑にパニックに陥りかけていた。
少し離れてよく見てみると、相手は女性なのか男性なのかわからない出で立ちをしていた。
裾の長いゆったりとした着物の上に、淡い山吹色の丈の長い上着を羽織り、更にその上に若草色の薄絹を纏っている。
その服装で膝裏くらいまである、翠の光沢を放つ真っ直ぐな黒髪をなびかせて歩く様は深窓のお嬢様か、天女のようにすら見えた。
立ち居振る舞いも物静かな印象を与えるが、何より一挙一動がとても優雅だ。
とてもではないが、このような物々しい場所には不釣合いな美人だった。
(・・・はっ!!もしや劉備さんの愛人?!)
咄嗟に、晶は自らの知識にある劉備の愛人を思い浮かべてみた。
確か劉備には愛人が何人かいたはずだ。
記録には残っていないだけで、もしかすると他にもいたのかもしれない。
・・・既に劉備と孔明が想像していた人物と違ったので記録間違いの線も否めなくなっているが。
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