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「さあ、じゃあ出発しよう!」
孫堅のその声を聞き、晶は振り返った。
目の前に広がるのは遥か彼方まで続く草原。
この先に、まだ見ぬ地がある。
新たな出会いも当然あるだろう。
蜀の人々は揃いも揃って困った人たちばかりだったが、呉の国はどうだろう。
既に曲者の気配がする人物はいるが、ここの人たちのように優しい心根を持っているといいなと晶は思う。
そして何より、自分の友人かもしれない人物がいる。
心はざわめくが、不安はほぼ無きに等しかった。
(だって、私は帰る場所を見つけたんだもの)
帰ってきていいと言われた場所がある。
受け入れてくれた人たち・・・味方がいる。
1人ぼっちではないと思える。
だから安心して出かけることができるのだ。
(次に帰ってくるのはいつになるのかな・・・)
少々名残惜しい気持ちになって、晶は1度だけ城を振り返る。
距離があるためにいつもより小さく見える居城を見て、少し心が落ち着いた気がした。
ただの居候の身分だったはずなのに、いつの間にか自分の家を見ているような認識になっていると気がつき、晶は苦笑した。
(うん、近いうちにきっと帰ってこよう)
そう決意して晶は再び草原を見る。
その先に広がっているものはまだ見えないが、晶はこの先に向かって、確かな意思を持って1歩を踏み出したのだった。
<続く>
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