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視界に飛び込んでくる色は緑系か茶色系。
どこからどう見ても『森』という文字しか浮かんでこないような場所である。
自分が何故このような場所にいるのか、残念ながら晶の脳内から答えが返ってくることはなかった。
この信じがたい光景に、彼女は無意識に自分の頬をつねる。
「い・・・いひゃい・・・?」
呆然としまくっているにも関わらず、痛覚は正直である。
更にそれに追い討ちをかけるかの如く、目の前の鳥が晶の髪を銜えて容赦なく引っ張った。
「った!!いっ・・・痛い痛い痛いっっ!!!」
痛みのあまり涙目で叫ぶと、鳥は大人しく放してくれた。
その上、理解したか?と言わんばかりの視線で晶をじっと見下ろした。
(う・・・何なのこの鳥?そしてここは何処なのよ?!)
全く知らない場所にたった一人。
目の前にいるのは賢そうではあるが、視力に優しくないでかい鳥。
そして帰る術もわからない。
「・・・ッ!!」
急に恐怖がこみ上げてくる。
突然知らない場所に知らないうちに一人で放り出されたのだという事実を、脳が拒否したがっていた。
涙目になり、青ざめて震えだした晶を見て、鳥が困ったように目尻を下げた。
勿論恐怖に支配された晶に、それに気付ける余裕はない。
「おや?このようなところで何をしているのですか星藍(せいらん)?」
唐突に聞こえた第三者の声に、晶は反射的にびくりと身を竦ませた。
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