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第2話
~諸葛亮と愉快な仲間たち~
晶は本日何度目になるかわからない眩暈を堪えるために、こめかみを強めに揉んだ。
その悩みの元凶『その二』は目の前で満面の笑顔を浮かべている。
「でだ、晶(しょう)殿」
「だから晶(あきら)ですってば」
孔明に連れてこられてからこのかた、目の前の人物は正す気がないのかはたまた名前なんぞ覚える気がないのか、爽やかで人懐っこい笑顔を浮かべたまま間違った名前を連呼し続けているのだ。
原因はおそらく、孔明が彼に晶を紹介するときに紙の上に名前を書いただけで済ませたからであろう。
無論ルビなど振られるわけもない。
おまけに紹介した本人は読み方の間違いを訂正する気などさらさらないようだった。
その結果、見事なまでに彼は間違った読み方で晶を認識し、今に至るわけである。
ちなみに、訂正した回数はもはや数えたくないほどになっている。
晶は盛大な溜息をつき、天幕の隅に下がって面白そうに事を眺めている、眩暈の元凶『その一』に恨みがましそうな視線を投げた。
勿論神経の太そうな彼はにっこり笑って無視。
(この野郎・・・いつか絶対化けの皮剥がしてやる!!)
涼しい顔をしている孔明に僅かな殺意を抱きつつ、晶は視線を正面に戻した。
目の前の人物は相変わらずにこにこと笑っている。
精悍で逞しい体つき。
にもかかわらず、人懐こそうで愛嬌のある表情。
髪は短めに刈り込まれ、肌は焼けたのか少し黒めである。
最初に見た時は一般兵士だと思ったほど飾り気がなく、気さくな性格だった。
しかしながら、彼こそが三国志でお馴染みの劉備玄徳その人だと知った時は、本気で度肝を抜かれたとしか言いようがなかった。
そして孔明の客人だということから興味を抱いたのか、彼は自分の天幕に晶を迎え入れてくれたのだ。
そこで孔明から何処から来たのか、自分の今まで見てきた景色などを聞かれ、晶がそれを語る横で、彼は目をキラキラさせながらその話を聞いていた。
(なんか・・・子犬みたいね)
(たぶん)年上の男性に対する感想ではないのだろうが、その表現がしっくり来てしまうほどに、彼は実に楽しそうに話を聞いているのである。
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