究極の選択

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「やっぱり風俗しかないかぁ」 求人のチラシを睨みながら、柚子は頬杖をついて吐息した。 思わぬ再会により職を失ってから三日。 一刻も早く割のいい職を探さねばならない。 店を辞めたのは、証を怖れた為ではなかった。 証の言うように、そろそろキャバ嬢という仕事に限界を感じ始めていたことと……。 セレブ時代の自分を知っている人間に、これ以上会いたくなかったからだ。 今現在に知り合った人に今の窮乏状態を知られても何とも思わないが、あの頃を知っている人の前ではせめてセレブのままでいたかった。 ささやかな柚子のプライドだ。 赤ペンでチラシのヘルス嬢募集の欄にキュッと赤丸をつけた時だった。 ピンポンと呼び鈴が鳴らされ、柚子は顔を上げた。 線路下の格安アパートのドアにはもちろん覗き穴はなく、柚子は玄関前で恐る恐る返事を返した。 「…………はい」 しばらくの沈黙の後、不機嫌そうな低い声が返ってきた。 「俺だ。成瀬 証」 「………………!?」 柚子は目を剥いてドアを凝視した。 (な、な、なんでよ……っ!?) 意味もなくキョロキョロと辺りを見渡す。 だがすぐに次の声が飛んできた。 「おい、橘 柚子! いるんだろ、開けろ!」 観念して柚子はゆっくりとドアに忍び寄った。 「………間に合ってます」 「……………………」 直後ガチャガチャとノブが回され、ドアが激しく揺れ始めた。 「何が間に合ってますだ、さっさと開けろ!」 「嫌ーーっ! ちょっと、やめてよ壊れるでしょ! あんたに会いたくないから店を辞めたのになんでこんなとこまで来るのよ! 大体なんでここがわかったのよ!」 「うるせぇ、さっさと開けねぇとマジでこのドアたたっ壊すぞっ!」 「ちょっ……それだけはやめて! 弁償なんかできないんだから!」  
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