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予想外の反応を返され、柚子は急に恥ずかしさを覚えた。
カアッと耳まで赤く染める。
「操大事にして何が悪いのよ!言っとくけど男の人と付き合ったことぐらいありますから!」
「………聞いてねぇよ。てか、いい加減手ぇ離せ」
言われて柚子はハッと我に返り慌てて証の胸倉から手を離した。
証は緩んだネクタイを直しながら、ふっと溜息をついた。
「……つーかお前、今時処女に三千万て、花魁の水揚げかよ」
「………………」
「そんな肩甲骨みたいな胸して三千万なんてよくもまぁふっかけられたもんだな」
「………………」
「自分の体にそんなに価値があると思ってんのか」
「………………」
証が言葉を重ねる度に、グサッ、グサッと見えない針が柚子の胸に突き刺さる。
「大体お前は……」
「ち、ちょっと待って……」
KO寸前でようやく柚子は証の毒舌を止めた。
「前に会った時から思ってたんだけど……」
「あ?」
「あんたちょっと……キャラ変わりすぎじゃない?」
そう、柚子の記憶の中の証は、あくまで『泣き虫証くん』だ。
何を言われても言い返せず、隅でメソメソ泣いていたあの姿は影も形もない。
「当たり前だろ、あれから15年も経ってるのにいつまでもあのまんまな訳ねーだろ」
「で、でも……」
「てゆーか、15年ぶりに会ってしかもばりばり化粧してたのにすぐ気付かれるお前のほうが問題だっつーの」
「………大きなお世話よ」
これ以上この男と話していたら心が折れそうだ。
第一復讐だなんだと言っておきながら、自分を大事にしろなんて説得力がないにも程がある。
急激に疲れを覚えて柚子はこめかみを強く押さえた。
「…………ねぇ、ほんとにもう帰ってくれない? 私これから……」
「まぁいいや、買ってやるよ」
「……………は?」
顔を上げた次の瞬間、柚子は証に腕を掴まれそのまま畳の上に押し倒されていた。
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