究極の選択

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柚子は思わず息を詰めて証の顔を見上げた。 畳の匂いが鼻をくすぐる。 証は柚子の両手首を押さえ込み、じっと柚子の顔を見下ろしていた。 (……あ。やっぱり『証くん』の面影がある……) まるっきり変わってしまったと思っていたのに、こうして比較的柔らかい表情を見るとやはり昔の面影が残っている。 昔から女の子のように、整った綺麗な顔立ちをしていた。 「………目ぐらいつぶれよ、色気ねぇな」 押し倒したというのに、じっと自分の顔をガン見している柚子を見て、証は呆れたようにそう言った。 柚子はハッと我に返る。 (そ、そうだ。私、今押し倒されてるんだ) そう自覚した途端、急に心臓がバクバクいい始めた。 ぎゅっと強く目を瞑る。 (お、お金の為だもん。ここさえ我慢すれば……) すぐ頭上で証が動く気配がした。 ゆっくりと顔が近付いてくるのがわかる。 (………キス自体、すごい久しぶりなんですけど……) それを何の因果で、つい先日再会したばかりの男と今から初体験するはめになってしまったのか。 その時、証の手が柚子の手首から離れやんわりと柚子の頬を包み込んだ。 いよいよ来る、と思った次の瞬間。 その手がむにゅっと柚子の頬をつまんで横に引っ張った。 柚子はバチッと目を開ける。 「……………なっ!?」 「お前、押し倒したぐらいでこんな震えてるくせに、よく風俗で働こうなんて思ったな」 「………………!」 柚子は証の手を払いのけて跳び起きた。 「か、からかったの!?」 「当たり前だろ。処女なんてめんどくせぇ。誰が抱くか」 証はふんと鼻で笑って勝ち気に柚子を見下ろした。 カァーッと柚子の頭に血が昇る。  
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