究極の選択

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「なんで……そこまでするの? いくら復讐の為とはいえ、3千万なんて大金……」 すると証は唇の端を持ち上げるようにして笑った。 「少なくとも親切じゃねぇよ。3千万ぽっちで10ヶ月の間お前を好きにできるんだ。俺は高いとは思わねぇよ」 「………………」 「楽しいじゃねぇか。15年前は逆らえなかった相手を、金出して蹂躙できるんだぜ?」 柚子はじっと証の顔を見つめた。 ………要するに、この男にとってこれはゲームのようなものなのだ。 自分とは価値観が全く違う。 柚子にとっての3千万と、証にとっての3千万は全く価値が違うのだ。 (………いいわ。だったら受けて立つ) これはビジネスだ。 『証の奴隷』という仕事を、10ヶ月間だけこなせばいい。 こんな男に、心までは蹂躙されない。 柚子は意を決して畳に手をついた。 そうして頭を下げる。 証の顔からスッと笑顔が消えた。 「私を、買ってください」 凛とした柚子の声に証はわずかに鼻白んだように黙り込んだ。 だがすぐに勝ち気な笑みを浮かべて柚子を見下ろした。 「へぇ? 上等。俺の奴隷になってまで金が欲しいかよ。処女のくせに」 「………処女は今関係ないでしょ」 柚子は証の顔を睨み付けた。 「3千万貰えるんなら、どんなことだって我慢するわ!」 「………………」 証は面白いものでも見るような目で柚子を見つめた。 直後ふんと鼻先で笑い、威圧的に柚子を見下ろした。 「おもしれぇ。お前を買ってやるよ、橘 柚子」 その後しばらく、二人は睨み合うようにしてお互いの顔を見つめていた。  
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