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証の家は目測でも50階はあろうかという高層マンションだった。
しかも最上階に一人暮らしである。
(は~。こんなとこに住んでる人本当にいるんだ……)
20帖はありそうなリビングの入口で、正直柚子は立ちすくんでしまっていた。
広い窓からは都内の街が一望でき、遠く富士山も見える。
「さすが成瀬グループの御曹司ね、あんた……」
感心したように言うと、証は心外とばかりに柚子を見下ろした。
「ばーか。成瀬グループは親父の会社だ。俺は独立してここ借りてんの」
「………あ、そっか。あんた若社長だっけ」
つまり自分で会社を立ち上げ、自分の力だけでこんなすごい所で生活しているということか……。
しかも聞くところによると、天下のT大に通いながらの二足の草鞋だそうだ。
「……じゃあ私を買った3千万も、あんたのお金ってことよね……」
「あたりめーだ」
柚子は素直に感心して吐息した。
「………すごいね、証」
「そうだろ。尊敬しろ」
証はそう言うとリビングのソファーの上に上着を脱ぎ捨てた。
感心した反面、柚子はどうしようもなく惨めな気持ちになった。
15年前は同じ土俵にいたというのに、人というのは変わるものだ。
証のように全てにおいて成功している者もいれば、自分のように何もかもを無くして風俗に身を落とそうとしている者も……。
「おい」
声をかけられて柚子はハッと我に返った。
慌ててリビングに足を入れる。
「腹減った。なんか飯作れ」
「………え?」
柚子はチラッと時計に目を向けた。
夕飯にはまだ早い時間である。
「いいけど……。私、庶民の食べるようなものしか作れないよ?」
「いいよ別に。腹に入れば」
証はソファーに腰を下ろし、おもむろに煙草に火をつけた。
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